日本では急激なインフレを防ぐため、日本銀行による国債の直接購入は法律で禁止されています。
これはとても素晴らしいことです。
しかし「もしかすると日銀は民間銀行を利用して国債を間接的に買い取っているのではないか?」という疑問が湧きあがりました。
というのも民間銀行が所有する国債を担保に日銀が民間銀行にお金を貸しているためです。実際に2010年10月から2011年9月にかけて、日銀の受入れ担保残高は12兆円分も増加しています。
ここ10年ほどのプライマリーバランス(基礎的財政収支)は平均マイナス17兆円程度で推移しているので、その大半を日銀が間接的に引き受けていると想像することができます。
もはや「日銀が無制限にお金を発行している状況」といっても過言ではないのでしょうか。
ちなみに国債売買の仲介役として利用されている民間銀行の財務面(資本比率など)には、影響が出ないようになっています。詳しく知りたい方は自分自身で調べてください。
では、なぜインフレにならないのでしょうか?
それは毎年追加で発行しなければいけない国債は10〜20兆円程度で、これは日本の規模(マネーサプライ 約750兆円、GDP 約500兆円)から考えると、それほど影響の大きくない額だからです(2%〜3%程度)。
世界の平均インフレ率は約4〜5%(先進国は約1.5〜2.5%)程度あり、相対的に見て日本の潜在インフレ率はまだまだ低いと言える状況です。
では、なぜ日銀はこんなに回りくどいことをしているのでしょうか?
それは日銀の使命が「物価の安定」にあるためです。物価の安定は国民の 富を守ります。そのためには「政府からの独立」がもっとも重要な要素なのです。
しかし、国債が売れなくなり日本がデフォルトに陥ってしまえば、間違いなくハイパーインフレが起こり、日銀にとって望まない結果となってしまいます。そこで日銀は落としどころとして、政府とは一定の距離をおきつつ、こっそりと国債を下支えしているわけです。
また、「日銀が国債を買い取っている」と知られれば、国民の動揺により過度のインフレに動いてしまう可能性があるため、国民から「日銀は何もしていない」と批判されようとも、あくまで表立っては動かないようにしています。
国民から罵られようとも国民のためにやるべきことをしている日銀は素晴らしいです。まぁ、超エリートであり支配者階級の日銀職員にとっては「庶民の戯言」などはダメージにならないのかもしれませんが。
ついでに言えば政府も「日銀の国債買い取り」が表に出ないことにより、「高齢者からのインフレ批判を避けられる」「不安や危機感をあおって増税を国民に納得させる」「過去に構築された無駄な仕組みを強引に解消できる(仕分け事業)」など、国力を高めるための政治が進めやすいのかもしれません。
私たちがニュース・新聞などで知る情報はあまりにも表面的であり、庶民にとって耳触りがよく、そこからは真実を知ることはできないのだとつくづく思い知らされます。
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